はじめに
クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」( crowdworks.jp )でEM(Engineering Manager)をしている讃岐です。2022年11月に株式会社クラウドワークスに入社し、主にRailsでのサーバーサイドの開発を担当していました。
今回は、2025年の6月からEMという新たなロールに挑戦することになりましたので、その経緯と、最初の1ヶ月を走り抜けて今感じていることをお話しします。
経緯
自分がEMになった直接のきっかけは、上長である部長兼サービスCTOとの1on1でした。そこで「EMをやってみませんか」と打診を頂いたことです。
自分の目から見て、クラウドワークスのEMの方々は、組織や技術の課題に深く向き合い、プロダクトへの理解も非常に深い、エンジニアから多大な信頼を寄せられている頼もしい存在です。
そんなイメージがあったので、お話を頂いた当初は、正直なところ戸惑いしかありませんでした。というのも、自分は入社してまだ3年弱、しかも直近1年はAI関連の別プロダクトに携わっていたため、プロダクトへの理解にあまり自信がなかったからです。
あまりに自分の中のEM像とギャップがあったので、最初は冗談だと思っていました。が、上長から「半分冗談、半分本気です」と言われたとき、かえってその言葉に不思議な説得力を感じ、「これは本気かもなぁ」と思いました。
その言葉を受けて、「こんな自分でもこのプロダクトの成長のために役立てることがあるのかもしれない」と前向きに考えるようになりました。そして、その思いからEMの役割をお引き受けすることを決意しました。
今回は、そんな経緯でEMになった自分が、最初の1ヶ月を過ごしてみて何を感じたのか、振り返りながらお話しできればと思います。
感じたこと
役割が違う
AI関連のプロダクトでは開発リーダーとして動いていたのですが、チームで起きた問題はとりあえず自分が解決できるかどうか試す、無理なら他の人に回す、といった思考をしていました。
自分で対応できることは自分で巻き取り、他のメンバーにはそれぞれのタスクに集中してもらう。その方がチーム全体のスループットが上がり、開発がスムーズに進むと考えていたからです。
ただ、今振り返ってみると、このやり方が通用していたのは、もっと大きな問題が顕在化する前に、POや事業責任者の方々がうまく交通整理をしてくださっていたからなのだと感じました。
その感覚のままEMになった当初、自分は以前と同じように「まずは自分で何とかしよう」というスタンスでいました。しかし、EMとして向き合う問題は、開発リーダー時代に比べてはるかに規模が大きく、自分一人の手には負えないものがほとんどでした。
解決には時間もかかりますし、そもそもEMになったばかりの自分には解法自体もわからないものが大半なため、自己効力感がかなり下がっていました。
そんな風に少し思い悩んでいたとき、ふと、AIのプロダクトでお世話になった創業メンバーである取締役の記事に書かれていた言葉を思い出しました。
エンジニアという職業は、本質的には「課題解決」する役割であると考えています。それと対比すると、マネジメントという役割は「課題設定」、すなわちメンバーが解くべき課題(=この課題を解けば、目的・目標が達成できるという課題)を設定する役割です。
プレイヤーからマネージャーになって最初に越えなければいけない壁は、「課題解決」というエンタメを手放すことです。
(引用元:https://qiita.com/shinichinomura/items/457ba01b0fc67b37b775)
僕が感じていた問題はまさに自分が課題解決というエンタメを手放せていないからであり、役割が変わったことを認識できていなかったから感じていたものでした。
それまでは少し気後れしていた大きな問題にも、この気づき以降は「自分の役割は課題を解くことではなく、まず設定することなのだ」と、スタンスの違いと自分の実力不足を素直に認めることで、不思議とフラットな気持ちで向き合えるようになりました。
視座が高くなった
EMに就任して最も大きなメリットだと感じているのは、自身の視座が格段に高まったことです。
今振り返ると、以前は自分が担当するプロダクト開発のことだけを考えがちで、事業としての側面や、グループ全体の戦略に対する理解を深めようという意識があまりなかったなと思います。
しかしEMの職務は、より事業に近いものが多く、日々向き合う中で、市場や事業戦略、そして組織について自ずと考える機会が増えました。現在は、まだまだ知識不足を痛感しつつも、勉強し始めています。
また、EMという立場になったことで、グループのマネージャー陣と交流する機会も生まれました。特に、グループのEMが定期的に集まる会議は、各社の事業や組織文化の違いを知れたり、客観的なご意見を伺える貴重な場となっており、良い文化だなと感じています。
自分はいちエンジニアのままではおそらくこういった視座にはならなかっただろうと思っているのでEMになって良かったと思いました。
時間がたりない
自分が担当するグループは、メンバーがそれぞれ異なる4つのチームに所属しています。そのため、一人ひとりに的確なフィードバックを行うには、各チームのプロジェクト状況や課題をなるべく把握しておく必要があります。
結果として、把握すべきコンテキストが広がり、参加する会議の数はエンジニア時代と比較して約3倍に増えました。以前好きだった集中して作業できる会議のない日を設けることも今では難しい状況です。
自分は何事もある程度準備を整えてから臨みたいタイプなのですが関わる業務領域が広がったことでその準備時間を確保するのが難しく、これまで以上にシビアなタイムマネジメント能力が求められていることを痛感しています。
そのため始業直後と終業直前にタスクの整理や分解を行い、タスク完了までのステップを明確にして空いた時間にすぐに作業に取り組めるようにするなど、効率よく少ない時間でタスクを実施できるようにしています。
知識不足
EMになる直前の一年ほどは、新規事業でのAI開発や社内向けのAIエージェント構築に注力していました。そのため、現在のプロダクト領域から少し離れてしまっており、ドメイン知識のキャッチアップに苦労しています。
各チームの状況を把握したり、EMとしての新しいタスクに慣れたりすることに時間を使っていると、なかなか腰を据えて学ぶ時間が取れないのが正直なところです。
それに加えて、これまでのエンジニアとしての視点だけでなく、マネージャーとして経営的な視点も持つ必要があり、求められる知識が本当に増えたなと実感しています。
この前、営業でマネージャーをしている友人と話してみたのですが、営業の場合はピープルマネジメントの大変さはあっても、ここまで新しい知識分野が増える感覚は少ないようでした。
エンジニアリングマネージャーという役割は、技術とビジネス、そして組織と、本当に幅広い知識が求められるのだなと改めて感じている次第です。
終わり
自身の力不足を痛感し続けた、というのがこの1ヶ月の率直な感想です。
ただ、開発組織をより良くしていくことに直接的に関与できる立場になりました。この役割を通じて、エンジニアの皆さんがより働きやすく、成果を出しやすい環境を作れるよう、貢献していきたいと思います。
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