クラウドワークス エンジニアブログ

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【2018年版】クラウドワークスで起きた変化とその感想まとめ8つ

この記事は、クラウドワークス Advent Calendar 2018の24日目です。

メリークリスマス!

クラウドワークスの副社長をやってる成田です。

今年もアドベントカレンダーの季節がやってきました。毎年最後の方で、クリスマスとかぶりますw

この1年も、色々やらせてもらってめちゃくちゃ楽しかった!というのが雑な感想なんですが、振り返りとしてマネジメントサイドで、これはやってみて色々あった、と思うことをキリ悪く8個(!)、まとめてみました。

この1年で起きた変化とその感想8つ

1. 役員やマネージャーでエンジニアリングマネジメントやデザイン思考の読書会が始まった

  • 課題感やきっかけ

    • 組織規模が大きくなったり、新しい人がマネージャーになったり、別の会社から転職した役員がいたりして、マネジメントやプロダクト作りの共通言語作りって難しいよなあ、何か基軸となるものを作りたいなぁと思ったのがきっかけ
  • 実際やったこと

  • やってみた感想

    • 主観と解釈まみれだけど、これはすごいよかったですw
    • 共通の価値観が醸成される感じ。アジャイル開発のセオリーは何か。従来の開発と何が違うか?なぜそれがいいのかっていう共通言語ができるのは後々のコミュニケーションコストをすごい下げてくれると思いました。
    • 過去、現在、未来の軸で話していくと、次の指針が見つかる感じします(過去の反省をベースに議論したり、これからはこうしたいよね!っていう未来の動きを話したりすると共通の価値観が作られる)
    • 週40~50時間のうち1時間、2%くらいですが、価値はあるんじゃないかなあと。

2. スクラムマスター研修やPO研修を取り入れてみた

  • 課題感やきっかけ

    • エンジニアリングマネージャーの@ysk_118から、スクラムマスター研修受けたいっていう話があったのがきっかけ
    • 確かに共通言語になるようなものがなかったので思い切って組織に取り入れちゃおうと思って採用
  • 実際やったこと

  • やってみた感想

    • 役員、エンジニア、デザイナー、PO問わず、スクラムアジャイル開発の基礎を短期間で叩き込めたのがよかったと思います。
    • 読書会だとそれぞれの意見は交わしやすいですが、一方で実践的な部分に弱い側面もあります。研修型だと、強い講師に色々と耳の痛いところも突っ込んでもらうということで、より実践的な効果がありそうです。
    • 1受講で20万円とかするので安くはないのですが、ペイすると言えるんじゃないかなあと。まずは1,2名やってみて、そこから広げるのがおすすめです。

3. 「Be Agile」をスローガンにして全社にアジャイル文化を取り入れ始めた

  • 課題感やきっかけ

    • 元々クラウドワークスのバリューは「CW3」として下記が定義されている
      1. 10倍ゴール
      2. まず決めて、すぐ動く
      3. 最高、最良
    • が、これは全社の行動指針であり、マネジメントの指針として何が最適かはこの1年悩みの多い課題だった
    • その中で、マネジメント指針の構築を検討していたが、モチベーションを測る指標が高いチームを分析した結果、共通していたのが「チームを支援し、メンバーのwillやモチベーションを大切にする」「目標を握った上で自由度を高める」「常に変化する」といった共通項が浮かび上がってきた
    • これってスクラムとかアジャイルにも通ずるのでは?という考えと、上記に書いたような社長も含めたスクラム研修の動きも重なり、スクラムとかアジャイルみたいな考え方を全社に広げていくと組織が良い方向に変わるのではという仮説がたったのがきっかけ
  • 実際やったこと

    • 2019年9月期の全社のスローガンを「Be Agile」に設定した
    • 会社全体として、チームで目標を一致させること、目標への到達手段を固定せず自由にすること、前提を疑うこと、変化し続けること、みたいなことを大事なこととして発信し始めてみた

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スローガン「Be Agile」の発表

  • やってみた感想
    • 会社全体で、変化することが善であり、目的に対して手段を選ばない姿勢が少しずつ芽生えてきてると思います。
    • その結果、人事制度が見直されたり、チームの動き方が変わったり、常に変化し続ける会社に進化してきてると感じます。
    • ただ、そもそも論、非エンジニアとかだと"What is Agile?"っていう疑問が多くの人にあったりするので、全社に「浸透」させるのはそんなに容易じゃないです。
    • ここら辺はエンジニアリングマネージャーやデザインマネージャーが中心的役割を担って、アジャイル相談会を月に数回設けたり、月1のマネージャー会議でアジャイルについて議論したりすることで、少しずつ全社理解を深めてます。
    • ここら辺のエンジニアリングマネージャーの葛藤や挑戦は2018年マネジメント振り返りが参考になります。
    • また、経営陣の考えについてのより詳細に興味を持っていただけたら、マネジメントにおける「当事者意識を持て」という言葉の死を読んでいただけると嬉しいです。

4. フルリモート制度、フルフレックス制度、学習予算制度をスタートしてみた

  • 課題感やきっかけ

  • 実際やったこと

    • 週5リモートワークOKにした(もちろんチームと相談してほしい前提で)
    • フレックスのコアタイムを廃止した
    • 学習制度として月1万円、成長につながると自分が感じるものは基本的になんでも使ってOKにした
  • やってみた感想

    • みんなの満足度高い!(満足度90%以上)
    • ベロシティ上がるチームも出ました
    • 一方で、安全管理とか、文化の違う会社から入った新しいメンバーとかがいる時のオンボーディングとか、結構むずい、ということがわかりました。
    • 例えばまだコミュニケーション慣れてないのにいきなりリモートで顔が見えないから心理的な不安が抜けずにうまくいかないとか、別の会社とジョイントベンチャー作った結果、全然開発文化が違くてコミュニケーションコストが高まったり、みたいなことも起きました。
    • ここら辺のメリデメを整理しつつ、ただ一方でこれらの取り組みは働き方革命の旗手として価値があるものだったと信じているので、課題にしっかり対処してさらにいい制度にしていきたいと思います。

5. 「処す」活動が広がった

  • 課題感やきっかけ

    • プロダクトが6歳を迎えて、技術的負債が大きな課題になっていた
    • 具体的には、フロントエンド、お金周り、インフラ、データ構造。あらゆる面で、何か新しいことをやろうとすると、過去の負債が邪魔して開発スピードが落ちたり、実現したいことができないという事象が起きていた
    • その状況を打破しようというチームが生まれ、そこでの成功事例をきっかけにこの1年リファクタリングや機能廃止の動きが広まった
    • この動き全体を、「処す」と呼び、Slackのスタンプ含めプロダクト組織全体に広がったw
  • 実際やったこと

  • やってみた感想

    • 技術的負債は、サービスが年を取るにつれて増えるもの、なので、ゼロにすることは不可能だとは思います。
    • 一方で、何かを開発した時に、ちゃんと評価すること。評価結果がダメなら、すぐに処すというアクションは、取れたはず。それをやらなかったのは、大きな反省点だと思います。
    • あとは、何かを作る時に、あらゆる影響度を考えた上で開発する、という、「少し立ち止まって検討する」時間を意図的に作ることも大事だと思いました
    • ここら辺は、やっぱり実際に作ってる人たちが一番わかってるので、その声を邪魔しないように、チームに権限を渡して、どんどん自分たちで判断してやってもらう、ということを、もっともっと意図的に、加速度的にやればよかったなあとは感じてます。
    • という反省点が多数ある中でも、少なくとも負債を解消しようという機運がチームで高まったり、マネジメントとしてそれを推奨することができたのは、この1年の大きな前進だった気もします。多分、過去1でそれができた1年だったかなあと。
    • 今後は、これまでの負債解消もそうですが、新たな開発を実施する際にも常にこの視点を入れて開発することになり、会社としてチームとして一段上のフェーズで戦える気がしています。
    • なお、2019年9月期は、これが「剪定」という言葉にアップデートされて、組織の方針に正式に組み込まれています。

6. デザイン思考をフル活用して新しいプロダクトを開発してみた

  • 課題感やきっかけ

    • デザイン思考の勉強会とか、ユーザーエクスペリエンスチームが本格的に立ち上がったりして、「デザイン思考とはなんぞや」の共通認識が組織全体で徐々に広まってきたので、今度はそれを実際のプロダクトで試してみたかった。そしてプロダクトを成功させたかった
  • 実際やったこと

    • 完全ゼロからユーザーインタビューによるインサイトの深掘り、解決策のブレスト、プロトタイプ作り、みたいな、デザイン思考をプロダクト開発に適用
    • 結果、フィークルというFintechのプロダクトを立ち上げてみた
    • 最初の起点は自分も入って作って、初期インタビューは自分もやって、エンジニア1名から立ち上げる形でスタート
  • やってみた感想

    • 実際に、ユーザーのインサイトを取り入れながらサービスの訴求ポイントが変化したり、色々しながら、ユーザーの皆さんに反響をいただけるレベルまでプロダクトが見えてはきました。
    • サービスが色々発散しない、ユーザーの価値に集中できる、という意味では、デザイン思考は間違いなく意味があったと思います。
    • 実際、ユーザーインサイトの深掘りや解決策のブレストやプロトタイプ作りなどがないと、ユーザー価値がブレたり、プロダクトアウトになるリスクは高いと感じます。
    • 一方でプロダクトが当たるかどうかは、ユーザーインサイトとソリューション開発のみならず、経済合理性や財務基盤、テクノロジーマーケティングなど、必要な能力は多岐に渡るので、それを一緒に蓄えて行かないと難しいのも当たり前だけど重要な事実。
    • そこらへんも今期はしっかりやって成功させたいなーと思ってます。
    • 詳細は新規サービス「フィークル」が誕生するまでの軌跡にまとまってます。

7. 自分自身でディープラーニング検定を受けたりアイデミーで機械学習を勉強したりしてみた

  • 課題感やきっかけ

    • AIだAIだ、とはいうけれど、AIが何者かは正直わかってない感
    • AIだけでなく、ブロックチェーンにしてもXRにしても、その時々で重要な技術があったとしても、本質がわかってないのに、今会社に必要なものが何かを理解し、組織的にそれを広げたり採用に生かすことはやっぱり難しいよなあと感じ、何かしら自分が本質を掴めるようになりたいと思ったのがきっかけ
  • 実際やったこと

  • やってみた感想

    • 本当に本当にコアの部分は、大まかにカバーはできたと思います。
    • そもそも囲碁コンピュータのAlpha Goがどういう構造でできてて、なぜあれがブレークスルーなのかとか、機械学習の中で、教師あり、教師なし、強化学習の違いはなんなのかとか、そういうのがわかるのは、技術を本質的に理解するという意味で当然ながら大きいと感じます。
    • 例えば、レコメンデーションには協調フィルタリング使うのがまず良さそうとか、異常検知ではオートエンコーダー使えるかも、とか、課題と手法レベルであたりがつくし必要な組織としてのケイパビリティも実感を持って理解できるので、組織作りや採用方針にも活きてくるとは感じました。
    • 一方で、実際にアプリケーションを作るところはやらないと、さらに本質を理解することはできないので、そこらへんは時間を確保するのが本当に大変です。週に30時間とか取らないと、正直実装まで行かないし、python/numpy、Pandasの理解とかもできずに終わってしまうので、やるならちゃんと時間を作って行かないといけないです。
    • さらに、ディープラーニングの技術自体は、圧倒的速度で進化が進んでいて、もはや数年前のものは古い技術となりつつあり、逆にそれを応用できない会社がもはややばいというレベルになっていく(る)可能性があり、常に会社としてその技術にキャッチアップできる、そして古く一般化した技術をいち早く取り入れられるようになっていかないと本当にまずそうだなあという、ある種の危機感みたいなものは覚えました。いかにここから実践に移していくか。これがポイントだなと感じてます。

8. VRなど新しいテクノロジーに取り組むチームが出てきた

  • 課題感やきっかけ

    • そもそも上記の通り、リモートワークが当たり前化している中で、VR出社の記事とかVR ChatとかClusterとかを知り、XRの技術は働き方を大きく変えるかもしれない、働き方改革の起爆となるかもしれない、と思った
    • Oculus Goを買ってみてやってみると、この安さでこの体験はおったまげ!と感じた
    • XR自体が、働き方や人のコミュニケーションのあり方を変えることは目に見えている中で、「働き方革命」を標榜する我々が他社に先駆けて取り組んでいくことに意味があるのではないか?と思って色々考え始めたのがきっかけ
  • 実際やったこと

    • 自分自身で、VRの会社に10社以上コンタクトをとって、今起きてること、最先端のことを学んで、勉強会等も行った
    • それをとりあえずslackとかTwitterとか日報で発信した
    • 結果、VRが大好きなデザイナーのタムーによってVR開発が少しずつ進み、VR会議とか、アプリケーション開発とか、そういった取り組みが始まった

  • やってみた感想

    • 3年5年先にくるかもしれない未来に向けて実験を進めるのはとても大事で価値があると感じてます。
    • それを20%ルールじゃないけどちょっとずつでもやれる環境を作れるのは大事なことだよなあと。
    • 何より、新しいテクノロジーにはワクワクするし、そういうチャレンジはずっとやっていける会社でありたいというのがやってみての思いです。
    • が、その裏では、もちろん事業が利益を生み出していたり、余力を持てる状態に常にしておいたり、そういうのが大事で、マネジメント的には難しさがあるのも事実。
    • また、ただ新しいものに飛びつくだけではなく、本質的にユーザー課題や社内の課題に向き合ってテクノロジーを活用していけないと、それはプロダクトアウトになるので、やっぱりプロダクトマネジメントが重要だと思いました。
    • あと、以前からも機械学習とかマイクロサービスとか、これまでも新しい取り組みはいくつも考えてきたけど、こういうのは「積み重なること」が何より大事で、それは今年退職者とかの影響もあってできなかったなあという反省があって、新しいテクノロジーであればこそ、継続性というのを大事にしていきたい感あります。
    • 来年は、より一層、チームで新しいことにトライできる環境を作り出すこと、それが本質的にユーザー課題とか社内の課題を解決できるようにしていくこと、そしてそれが長く続くようにすること。これに挑戦していきたい。
    • ジョイントベンチャーであるクラウドマネー社では、GCP使って最初からマイクロサービスで作ってたり、Kubenretes採用したり、Golangで書いてたり、認証基盤を本格的に作っていたり、今までRailsAWSモノリスプロダクトになっていたところとはだいぶ違うジャンプができてきていて、それも楽しいし、ちゃんと形にしていきたい感!
    • VR系の詳細は社内初!Oculus GoでVRミーティングを試してみた。とかチーム内1on1をVR上で行った結果、対話が苦手な自分でも本音を話せた件についてをご覧ください。
    • 認証基盤の話などはOpenID Connectの始め方をご覧ください。

最後に

読んでいただいてありがとうございました!

良い点だけでなく、難しい点や改善すべき点も色々書かせてもらいましたが、

総論としては、この1年も多くの変化が起こせて楽しかった!です。

  • スタートアップから数十人規模、事業で数十億規模
  • 単一プロダクトから複数プロダクト

みたいな変化を迎えた企業の皆さんに少しでもヒントになるような内容になればと思って書きました。参考になれば幸いです。

わかっていても完璧に対処できることは稀ですが、それでもこういった情報が広まり、少しでも日本全体のプロダクトカルチャーが進化していくといいなあと思ってます。自分もいろんな会社さんの情報でこれからも勉強させていただきます!

それでは!また来年も宜しくお願いします!

アドベントカレンダー最終日は、クラウドワークス1、愛に溢れる男、@lemtosh469による、プロダクト開発を取り巻く愛と文化についてです。

是非読んでいただけると嬉しいでーす!

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