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Turnip のテストレポートを見やすくしてみた

Turnipのステップ実行毎にスクリーンショット(以下SS)とレンダリングされたhtmlを記録するFormatter、CapturefulFormatterを作りました。 本記事では、簡単な使い方の紹介と、どのようにステップを記録しているかについて記していきます。

背景

Ruby on Railsでの受け入れテストと言えばCucumberが著名ですが、ステップ定義にて正規表現を用いる点や、RSpecとの二本立てとなっている点などが課題となっていました。 この2点を解決すべく生まれたのがTurnipです。Turnipの詳しい説明はるびま42号のTurnip解説記事が詳しいので割愛します。

しかし、Turnip では、テストレポートもRSpecのものを使うため、特にステップの失敗時のエラーメッセージがかなりわかりにくくなってしまいました。

下記に例を示します。とある画面にボタンが描画されていなかったため、ステップ実行に失敗したと予測されるテスト結果です。ですが、結局どんな画面だったのかはわかりません。

f:id:koichiroo:20160112051655p:plain

ステップ失敗時のSSを撮るために生まれたのが TurnipFormatter および Gnawrnip です。 大変便利なgemですが、TurnipFormatterとGnawrnipの組み合わせは、キャプチャのタイミングがページ遷移毎となっており、細かなタイミングでのキャプチャが得られません。 javascriptによる制御が組み込まれたWebアプリケーションでは、もう少し細かなタイミングでのキャプチャが欲しくなりますし、 受け入れテストのレポートにするならば、ステップごとのキャプチャが欲しくなります。

CapturefulFormatter の機能

CapturefulFormatterは、Turnipのステップごとに、ステップ名とスクリーンショット、描画されたhtmlの3つを記録するシンプルなFormatterです。 各ステップのスクリーンショットと描画されたhtmlが保存されるため、いざバグが発生したときなど、調査がよりスムーズに行えるようになるでしょう。

このFormatter使うことで、こんな感じのテストレポートが生成できます。

f:id:koichiroo:20160112052109p:plain

非常にわかりやすいレポートが生成されるので、エンジニアだけでなく、他部門のメンバーにもテスト結果がスムーズに共有できます。 また、新しく参加するメンバーのためのマニュアルとしても活用できるかと思います。

レポートのテンプレート等のカスタマイズもサポートしていますので、ユーザ独自のきれいなレポートを作成することも可能です。 その他、実装して欲しい機能の要望などがあれば、Githubにて提案いただければ幸いです。

CapturefulFormatter の実現方法

CapturefulFormatterはRSpecのCustomFormatterの一つとして実装しました。 これは、TurnipはRSpecの エクステンション なので、 Turnipの実行記録をとるCapturefulFormatterもRSpecの機構に則るべきだと考えたためです。

実装するためには二つの課題がありました。

まず、RSpecが各Formatterにどのように通知を行っているかを把握する必要があります。ステップ実行前後の通知をFormatterに通知する方法を調べましょう。 次に、Turnipがどのようにfeatureを実行しているか、特にstepの実行前後がどこにあるのかを把握しましょう。そうすることで、先ほど調べたFormatterへの通知を実際に実装できるようになります。

RSpec はどのように Formatter にイベントを通知するのか

RSpec::Core::FormattersRDoc にはビルトインの各種 Formatter の説明と、 CustomFormatter の作り方について記載されています。 これだけいろいろな通知を受け取れるということは、何か Formatter へを通知する共通処理があると予測できるでしょう。 このページを良く読むと、 RSpec::Core::Reporterリンク が貼られているのがわかります。 このクラスが通知機構の実装そのものです。 しかし、公開されているメソッドのうち、それっぽいメソッドは report だけであり、引き数もそれっぽくありません。 確認するために、ソースコードを見てみましょう。

report の実装を読むと、即座に start を呼び出しているのがわかります。

# https://github.com/rspec/rspec-core/blob/v3.0.4/lib/rspec/core/reporter.rb#L51
def report(expected_example_count)
  start(expected_example_count)
  begin
    yield self
  ensure
    finish
  end
end

start では notify を呼び出すだけです。

# https://github.com/rspec/rspec-core/blob/v3.0.4/lib/rspec/core/reporter.rb#L61
def start(expected_example_count, time = RSpec::Core::Time.now)
  @start = time
  @load_time = (@start - @configuration.start_time).to_f
  notify :start, Notifications::StartNotification.new(expected_example_count, @load_time)
end

notify で具体的に通知を行っているのがわかります。

# https://github.com/rspec/rspec-core/blob/v3.0.4/lib/rspec/core/reporter.rb#L135
def notify(event, notification)
  registered_listeners(event).each do |formatter|
    formatter.__send__(event, notification)
  end
end

周辺のソースを眺めれば、finish や、 example_group_finished なども notify を使って通知をしているのが見て取れます。 今回は、これらに習い、 step_started を実装し、その内部で noify :step_started としてやることとしました。

# こんな感じのメソッドを実装してやれば良さそうだ。
def step_started(step)
  notify :step_started, Notifications::StepNotificaton.new(step)
end

ところで、このコードをRSpecのコード中に直接書くのは、あまりスマートではありません。 そこで、今回はモンキーパッチを当てることとし、下記の様なコードが実装されています。

# RSpec に当てるモンキーパッチ
module CapturefulFormatter
  module RSpec
    module Core
      module Reporter
        # Formatter へ送る構造体。今回は ExampleNotification の実装を参考にした。
        StepNotification = Struct.new(:description, :keyword, :extra_args) do
          private_class_method :new

          # @api
          def self.from_step_object(data)
            new data.description, data.keyword, data.extra_args
          end
        end

        def step_started(step)
          notify :step_started, StepNotification.from_step_object(step)
        end

        def step_finished(step)
          notify :step_finished, StepNotification.from_step_object(step)
        end
      end
    end
  end
end

RSpec::Core::Reporter.send(:prepend, CapturefulFormatter::RSpec::Core::Reporter)

これで、 RSpec::Core::Reporter.step_started が呼び出せるようになり、CustomFormatterで拾えるようになりました!!

Turnip がどのように step を実行するか

TurnipはRSpecの拡張であり、実行コマンドも

rspec spec/acceptance/attack_monster.feature

のように rspec を用います。

と、いうことは、 RSpec を拡張している場所がソースコード中にある はずです。 ファイルの一覧を眺めれば、それっぽいファイルがすぐにみつかるでしょう。 turnip/lib/turnip/rspec.rb です。 このファイル中では Turnip::RSpec::LoaderTurnip::RSpec::Execute という二つのクラスが用意され、ファイル末尾で Turnip::RSpec::Loader を RSpec にパッチしています。 パッチを当てやすいのは、Rubyの特長ですね!!

それぞれの挙動を、まずは Turnip::RSpec::Loader の方から見ていきましょう。

この Turnip::RSpec::Loaderload を定義し、 RSpec::Core::Configuration にあてています。 このパッチによって、 RSpec::Core::Configuration 中で load を呼び出すと、上のコードが呼ばれることとなり、指定されたのが .feature なら Turnip が処理することになります。

# https://github.com/jnicklas/turnip/blob/v1.2.2/lib/turnip/rspec.rb#L12
module Turnip
  module RSpec
    module Loader

      # ここで load メソッドをオーバーライド
      def load(*a, &b)
        if a.first.end_with?('.feature') # ロードされたのが .feature ファイルなら...
          require_if_exists 'turnip_helper'
          require_if_exists 'spec_helper'

          Turnip::RSpec.run(a.first) # turnip が起動!!
        else
          super
        end
      end

      private

      def require_if_exists(filename)
        require filename
      rescue LoadError => e
        raise unless e.message.include?(filename)
      end
    end
  end
end

::RSpec::Core::Configuration.send(:include, Turnip::RSpec::Loader)

より具体的には、 RSpec::Core::Configuration.load_spec_files での挙動が、このパッチのおかげで変化します。 これで、 rspec コマンド実行時に .feature ファイルが読み込まれた場合、Turnipが実行されるようになります。

# https://github.com/rspec/rspec-core/blob/v3.0.4/lib/rspec/core/configuration.rb#L1057
module RSpec
  module Core
    class Configuration
      def load_spec_files
        files_to_run.uniq.each {|f| load File.expand_path(f) } # パッチを当てることで、この load が Turnip::RSpec::Loader.load になる。
        @spec_files_loaded = true
      end
    end
  end
end

さて、 Turnip::RSpec::Loader.load では .feature ファイルロード時に Turnip::RSpec.run を実行していたのを覚えているでしょうか。 次は、いよいよ Turnip::RSpec.run を見ていきましょう。

少し複雑に見えるが、 Turnip::Builder で Gherkin をパースして、RSpecの desribe ブロックを作り上げ、それを実行しているだけのコードです。

シナリオごとに describe ブロックを定義しており、 it(scenario.steps.map(&:description).join(' -> ')) により1つのシナリオからを1つのit句を作っています。 そして、各ステップの実行は Turnip::RSpec::Execute.run_step で行われています。

# https://github.com/jnicklas/turnip/blob/v1.2.2/lib/turnip/rspec.rb#L63
module Turnip
  module RSpec
    class << self
      def fetch_current_example(context)
        if ::RSpec.respond_to?(:current_example)
          ::RSpec.current_example
        else
          context.example
        end
      end

      def run(feature_file)
        Turnip::Builder.build(feature_file).features.each do |feature| # Turnip::Builder で Gherkin をパースします。
          ::RSpec.describe feature.name, feature.metadata_hash do # feature ごとに RSpec の describe を定義し...
            before do # before の定義もします!
              example = Turnip::RSpec.fetch_current_example(self)
              example.metadata[:file_path] = feature_file

              feature.backgrounds.map(&:steps).flatten.each do |step| # before で "前提" の各ステップが呼ばれるようにしてますね。
                run_step(feature_file, step)
              end
            end
            feature.scenarios.each do |scenario|
              instance_eval <<-EOS, feature_file, scenario.line # シナリオごとに describe を作っています! そして、1 つの it を定義しています!
                describe scenario.name, scenario.metadata_hash do
                  it(scenario.steps.map(&:description).join(' -> ')) do # it は 1 つで
                    scenario.steps.each do |step| # 中では step をぐるぐるまわしていますね。
                      run_step(feature_file, step) # ここがステップ実行の本体です
                    end
                  end
                end
              EOS
            end
          end
        end
      end
    end
  end
end

さて、ステップ実行の本体が run_step だとわかりましたので、早速、 RSpec::Core::Reporter の時と同様に、 run_step 前後に通知を行うモンキーパッチを作成しましょう。

module CapturefulFormatter
  module Turnip
    module RSpec
      module Execute
        # 各ステップを実行する。前後に RSpec::Core::Reporter に向けて、実行内容を通知する
        def run_step(feature_file, step)
          reporter = ::RSpec.configuration.reporter
          reporter.step_started(step)
          super(feature_file, step)
          reporter.step_finished(step)
        end
      end
    end
  end
end

::Turnip::RSpec::Execute.send(:prepend, CapturefulFormatter::Turnip::RSpec::Execute)

ここまでの2つのパッチを当てることで、独自Formatterでstep前後の動きを記録できるようになりました!!

CapturefulFormatterでは、単純に Capybara.current_session.save_screenshot を行い、SSを保存しています。

むすび

ここまで記してきたように、本記事ではステップごとの SS を記録するFomatterの誕生理由と、その実現方法について述べてきました。 実際のCapturefulFormatterでは、ステップごとの情報を記録した後、テスト終了時にerbをもとにレポートを作成する機能なども実装されています。 しかし、コアとなるステップ前後のhook追加については、上記に示した二つのパッチのみで実現できるのが、おわかりいただけたでしょうか。

本記事の方法を使えば、例えば上記パッチのみを spec/support 以下に実装することで、読者自身のCustomFormatterを定義することも簡単です。 せっかく、わかりやすい受け入れテストの記述ができますし、スクリーンショットも簡単に撮ることができるので、読者の中にそのような要望があれば、本記事を役立てていただければ幸いです。

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